夏と加齢と音楽と/(「緑の木陰」から転載)
いま、「作務衣」を短くしたようなものを着て、旧型のウインドウ型エアコンを除湿にしてこれを書いています。ときどき湿度計を見て手動でコントロールしています。エアコンのコントロールはもっぱら温度で行われているようですが、もし湿度でコントロールするのがあったらすぐにでも買い換えるでしょう。もっとも、昔のウインドウ型のように湿度だけ下げることができるようでないと意味がありませんが。
日本の夏を快適に過ごす工夫は浴衣と打ち水に風鈴や金魚鉢のような、いわば気分の持ちように関係したものが頭に浮かびます。気分で暑さが変わるのは昔地下鉄で通勤していた時代にずいぶん経験しました。あのころの地下鉄にはエアコンがなく大変蒸し暑かったのですが、心頭滅却して汗を止めじっとして過ごしたものです。
気分ということになれば音楽の出番ですが、演奏する方は大変なエネルギーを使うので、消夏法にはなりません。当然聴かせていただくかたちになります。
絵画などと違って音楽は空気を振動させるので、本人の意思にかかわらず耳にはいりますが、じつはこれが極めて問題でして、特に夏向きに開け放つと隣近所に迷惑を掛けることになります。設備の整ったリスニングルームで鑑賞なさっている方々にはご縁のない話でしょうが、書斎で聴いている者にとっては切実です。
そんな訳でこの夏に向かうのに備えて夏向きのヘッドホーンを新調しました。フルオープンエアー型という代物です。いわば耳の近くにスピーカーを置いたようなものです。ですが加齢に伴う聴覚特性の変化はあらそえません。メーカーの若い方々が行ったチュ―ニングが合わず、切れ味の悪さに幻滅してしまいました。恐らく外耳から中耳にかけての物理特性が変わってしまっているのでしょう。普段この耳でコンサートを聴いているのですから問題ないはずですが、やはり再生装置で聞く場合にはある種の誇張が必要なのでしょうか。
スピーカーの方は自分でチューニングしますので如何様にでもなりますが、ヘッドホーンはそこまで自由になりません。でも生来の諦めの悪さがまたしても頭を持ち上げ悪戦苦闘が始まりました。考えてみれば眼鏡は自分に合わせて誂えるのですから、ヘッドホーンだって誂えたいではありませんか。
工夫その1:ヘッドホーンをずらして掛ける。=フルオープンエアー型ですから耳の周りはあいているのですが、前寄りの下方にずらして更に空きを大きくすると切れ味がよくなります。
工夫その2:補正回路を作る。=ヘッドホーンにはアンプの出力のうちのほんの一部しか使いませんので、余っているゲインを利用すれば抵抗やコンデンサーといった受動素子だけでいろいろな補正が行えます。私の場合は、800Hzあたりから高い方にかけて徐々にゲインを上げ、最大で2db程持ち上げました。さらに、左右のチャンネルを位相をずらして混合するいわゆるクロスフィードをつけました。(「クロスフィードネットワークの概要」を参照)
この二つを実行したところ、満足という訳ではありませんが一応許容範囲にはいってきました。
こうした判断をするにあたってインターネットでさまざまな情報をもらいましたが、加齢という生理現象はもっぱら医療や介護の問題として扱われているようでした。本当はもっと眼鏡のようにファッション性まで視野に入れたおおらかな考え方が必要だと思いました。
お蔭様でこの夏はこころおきなく音楽が味わえそうです。
(2006年初稿。2009年まで改訂2回。)
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