深海生態系の価値
講座「海底資源研究の最前線」の第7回目です。今回のタイトルは「環境影響評価:深海生態系の価値を計る」でした。講師はJAMSTECの環境影響評価研究グループのグループリーダー山本啓之先生です。
環境影響評価という言葉が抽象的に響くのでなかなか概念が掴めません。色々と伺ったノートを読み返してみて、煎じ詰めると次のようなことなのかなと思いました。
#深海には多くの生物がいて地球上の生態系の重要な部分を担っている。光合成で発生した微生物はマリンスノーなどとして深いほうに落ちて行く。(沈降フラックス) 但し沈んでいく過程で食べられて3000mに到達したときには5%にまで減っている。しかし海溝では蓄積されて食料が豊かにあるらしい。逆に深海の生物は湧昇流に乗るなどして上層の生物の食料になる。
#調査船で近年明らかになってきたのは深海には多くの生物が棲んでいることだ。ギンザメの仲間など。また近年クラゲが深海に沢山いることが分かってきた。(多くは引き上げるとばらばらになって見えなくなるので発見が遅れた。)3000mのサンゴ(深海サンゴ)はソフトコーラルである。
#深海でメタンガスが出ているところ(湧水域)ではそれをエネルギー源にする生物群集がいる。黒島海丘(640m)ではクロシマシンカイヒバリガイが棲んでいる。またオオエンコウガ二がそれを食料にしている。またコモンコシオリエビは体の表面にバクテリアを育てて食べている。
#近年人類が急速に排出量を増やしている二酸化炭素の30%は海水中に吸収されて、深いところに有機物となってストックされている。(22億トン/年) これに対して、陸で回収される量は9億トン/年しかない。そのため海水が酸性になり始めていてそろそろ限界に近づいている。(普通の海水はpH8.0)
#二酸化炭素で温暖化が進むとサンゴは生息域が高緯度に移動するだけでは済まない。すなわち海が酸性になると生きていけなくなる。
#環境影響評価は、開発を考える場合にまず行なうことが国際的に義務付けられている。深海底の資源の開発をする場合には、先ず深海底の生態系を把握する必要がある。深海の生態系は全地球の生態系の一部であるが、海は広さと深さが大きい。
陸地:149x106km2
海:361x106km2
深さ3,000-4,000m:19.6%
4,000-5,000m:33.1%
5,000-6,000m:23.3%
従って地球全体の生態系に占める重要度が大きい。生物圏の80-90%は水の中である。
環境影響評価の基準には
1.科学的データに基づく基準
2.Stakeholder(利害関係者)による基準
3.生態系サービスという基準
がある。
①なりゆきシナリオ(過去からの経年変化を指数化)
WWFによるLiving Planet Index
Global Network によるHumanity's Ecological Footprint
②生物生産と物質循環(経済学から生物多様性を評価)
Minimum Ecosystem Assessment
TEBB : The Economical Ecosystem and Biodiversity
REDD: Reducing Emission from Deforestation and forest Degration
③SATOYAMA & SATOUMI(人間の行為が長い年月の間に生態系の一部になっている場合。)
④企業のための生態系サービス評価(ESR):日立製作所
⑤問題点:
・深海の場合、Stakeholderに「住民」がいないので、代わりに研究者がはいる。
・深海の食物連鎖は時間が長いことが問題。
・データーの統合
・トレーニングを受けた人手
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コメント
tona様
確かに難しくて困りました。少しでも老化を防ぎたいと思って参加したのですが、いくらかでも役に立ったかも知れないと淡い期待を抱いています。次回は最終回のフィールドワークです。
投稿: evergrn | 2012.12.24 22:35
もう7回目なのですか。
海底の様子はTVで映像を見るだけですので、そこからいろいろ想像して拝見しました。
複雑な要素もあって、また学問ですから難しいです。
深海の生態系の価値をまとめでほんの少しだけわかりました。
ありがとうございました。
投稿: tona | 2012.12.24 19:29