深海用ロボットの技術
講座「海底資源研究の最前線」の第5回目です。タイトルは「海底資源を探す海中ロボット」で、講師はJAMSTEC海洋工学センター海洋技術開発部探査機技術グループのグループリーダー吉田弘氏です。講師陣のなかで唯一の工学者で、サイエンティストの先生方とは切り口の異なる講義でした。
現在のJAMSTECのロボット(無人探査機)には「ハイパードルフィン」「かいこう7000II」「ディープ・トウ」に、「うらしま」「ゆめいるか」「じんべい」「おとひめ」が加わっての合計7台ある。
「うらしま」から「おとひめ」までの4機は自律型ロボットで海底の形を検知して障害物を避けながら自律的に移動する。このうち「ゆめいるか」は尾部の4枚の翼のほかに機首にも4枚の翼を持っていて進路と姿勢を独立に制御できる。「おとひめ」は停止あるい微速移動での作業用で、機器の着脱や保守が容易な大型の構造をしている。これらのロボットは3000mまでの探査に使われる。
海中ロボットは極めて圧力の高い深海で使うので、それに耐える構造が必要だが、いわゆる耐圧容器のような構造では海中で浮き沈みできない重さになってしまう。そこで「耐圧構造」ではなく「均圧構造」としている。空気の微細な泡「マイクロバブル」をエポキシ樹脂に閉じ込めた比重0.4~0.6の材料を使って機器の間を満たし、僅かな伸び縮みに対しては緩衝用に細いチューブをつけている。
海中では発電機は水圧で排ガスが排出できないので使えない。リチウム・イオン電池を電源にしている。他に燃料電池も使っている。
海水中にはGPSの電波は数センチしか届かない。従って位置を把握するにはH2Aロケット用を改良した「精密な」慣性航法システムを使っている。
自立型を多用する理由は、有人の場合と比較して安全対策などに大きなコストが掛からないため。
海底の自然物は人工物のようなパターン・マッチングが使えないので、制御のアルゴリズムは「アイマイ」情報を用いて構成している。
CO2のセンサーは海底資源の探査に欠かせないが、交換膜を使うので非常に反応がゆっくりしている。そのため移動しながらのデーター採取にはpHセンサーを併用してデーターを一部飛ばすなど様々な工夫がされている。
「おとひめ」では通信手段に400kHzの超音波を使う。これでステレオカメラの映像を毎秒0.8~1.0枚送れる。また時間差で合成する合成開口ソナーを使って解像度を10~100倍向上できる。
異常事態に対応するために沈んでいるロボットを回収するシステムを開発した。
レーザースキャナーを用いて海底映像の可視化ができる。
開発中の新ROVネプチューンでは180度のパノラマ映像を計画している。また信頼性の向上のため二重化やモニターリング、長時間長距離化(1000km)も計画されている。
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